この記事では、成長株投資法で有力な銘柄を見つけるにあたって使用する「4ステージ理論」と「トレンドテンプレート」について解説します。
トレードの候補となる有力銘柄を見つけるといっても、闇雲にすべての株を調べるのは非効率です。
そこで、ミネルヴィニの成長株投資法では、銘柄をスクリーニングする際に「4ステージ理論」を採用し、その理論をベースに実際にスクリーニングする基準として「トレンドテンプレート」を用います。
以下では、まず株価の4つのステージについて解説し、そのうえでトレンドテンプレートがどんな基準で作られているのか、そしてスタン・ワインスタインとミネルヴィニの投資法の違いについても説明していきます。
株価の4つのステージ
4ステージ理論は、投資家スタン・ワインスタインが1992年に出版した『Stan Weinstein's Secrets for Profiting in Bull and Bear Markets(スタン・ワインスタインの強気相場でも弱気相場でも利益を出す秘密)』の中で提唱されました。。
一言で言えば、株価にはサイクルがあり、4つの期間を循環しているという理論になります。
具体的にチャートを挙げて説明します。以下は2018年~2023年ごろのテスラ(TSLA)株のチャートです。大まかにですが、4つのステージで分けるとこのようになります↓

各ステージについて、簡単に説明していきます。
ステージ1:停滞期(横ばい・調整期間)
ステージ1は株価が横ばいで推移し、明確なトレンドがない期間です。出来高も少なく、投資家の関心も薄いです。
この期間に投資しても大きな上昇は見込めないため、仮にお金は損しなかったとしても時間の損失につながります。また、一時的に上昇しても結局ダマシのブレイクアウトだったり、場合によっては市場の調整や企業の業態悪化でいきなりステージ4の下落に巻き込まれる可能性もあります。
ステージ2:上昇期(利益を最大化できるフェーズ)
ステージ2は株価が上昇トレンドに入り、機関投資家の資金が流入し始める期間です。また、多くのトレーダーや投資家が参入し買い圧力が強くなる他、ポジティブなニュースや好材料にも恵まれた時期です。
ミネルヴィニの投資法では、基本的にこのステージ2にある銘柄だけを購入します。(非常に重要)
なぜステージ2の銘柄だけを狙うかというと、ミネルヴィニのリサーチによると、過去の大きな上昇相場を分析した際に、大きな成長をした銘柄の98%がステージ2の時期に大きく上昇しているからです。たとえば10年間で株価が5ドルから50ドルに成長した銘柄があったとして、その上昇分のほとんどはステージ2の時期だということです。
株価がステージ2にあると判断するためにはいくつかの条件を満たしている必要があり、その条件に関しては後述します。
ステージ3:天井形成期(売りのサイン)
もう一度先ほどのテスラのチャートを掲載します。黄色の枠で囲んだ箇所に注目してください。

急激に株価が上昇していますね。これは「クライマックス・トップ」や「エグゾースチョン・ギャップ」などと呼ばれるタイプの上昇の仕方で、天井のサインと言われます。
例えるなら、登山の登頂直前で最後の力を使ってゴールし、疲れ切って動けなくなるようなものです。上記チャートでも、ギャップをつけて高値まで登ったあと、一度も最高値を更新することなく下降期に入っています。(もちろん、これらのサインが出たからと言って、必ず天井になるわけではないです)
ステージ3は、ステージ2と違って価格の上昇は鈍くなり、出来高は増えても価格は伸びないという特徴があります。ステージ2に乗り遅れた一般投資家がお金を入れ始めるのはこのステージですが、すでに株価の勢いは失われつつあります。
ステージ4:下降期(大幅な下落リスク)
ステージ2の上昇が終わり、さらにステージ3に入って横ばい期間も抜けると、そこからは明確な下落が続くステージ4になります。
ステージ4では安値の切り下げやギャップダウンが頻発します。ステージ2では出来高をともなった上昇が起きますが、ステージ4はその逆で大きな出来高とともに下落する傾向になります。また、機関投資家はポジションを手仕舞い、悪材料やネガティブニュースも多く発生します。
基本的にステージ2以外でロング(買い)はしませんが、とくにこのステージ4では絶対にロングポジションを持ってはいけません。お金と時間の両方を失うことになります。上級者向けではありますが、逆にショート(売り)を狙うステージになります。
なぜステージ2だけで買うのか?
上記で4つのステージを説明しましたが、前述の通り、買うのは基本的にステージ2にある銘柄だけです。
ステージ1と3に投資すると時間を、ステージ4では時間とお金を両方失うことにつながるからです。
買ってすぐ上昇する銘柄から素早く利益を出して、複利の力で資産を増やしていくことが、モメンタム投資、とくにミネルヴィニのような手法の肝なので、すぐに強い上昇を見せない銘柄は排除するのが基本となります。
トレンドテンプレート - ステージ2の銘柄を見極めるための基準
ここまで4ステージの特徴を見てきましたが、ミネルヴィニの成長株投資法で重要なのは「その銘柄がステージ2にいるかどうか」だけです。
これを判別するため、ミネルヴィニが開発した「トレンドテンプレート」を使って銘柄をスクリーニングします。条件は以下の通りです。
a.移動平均線の条件
- 株価が150日(30週)移動平均線および200日(40週)移動平均線の両方を上回っている
- 150日移動平均線が200日移動平均線を上回っている
- 200日移動平均線が少なくとも1か月以上上向きになっている(理想は4~5か月以上)
- 50日(10週)移動平均線が150日・200日移動平均線の両方を上回っている
- 株価が50日移動平均線の上で推移している(例外として「Low Cheat」セットアップあり)

b.52週安値-高値の条件
- 現在の株価が52週安値から少なくとも25%以上上昇している
- 現在の株価が52週高値の少なくとも25%以内にある(高値に近いほど理想的)

c.相対的な強さ:RS(レラティブストレングス)の条件
- 相対的な強さ(RS)ランキングが最低でも70以上(理想は90以上)
補足:RSラインが直近6週間以上上向きである(理想は13週間以上)➡ RSラインが下落トレンドにある場合は警戒が必要
RS(レラティブ・ストレングス)とは、成長株投資の本で有名なウィリアム・オニールの会社であるIBDが独自に出している指標のことで、その株が全体の中でどれだけ強く買われているかを数値化したものです。
現在では彼が創設したIBDのツールのひとつであるMarket Smith(マーケット・スミス)というチャートソフトなどで各銘柄ごとのRSを確認することができるほか、マークミネルヴィニが運営するMinervini360というコミュニティの中でも、RSに似た指標であるRPR(レラティブ・パフォーマンス・ランキング)を見ることができます。
まとめ
繰り返しになりますが、ミネルヴィニの成長株投資法を行うことを前提とした場合、実際に4ステージ理論をトレードに応用する際に重要なのは「ステージ2であるかどうかを特定すること」だけです。(ショートの場合はステージ4の特定)
そして特定するためは、上述したミネルヴィニのトレンドテンプレートを適用してスクリーニングするだけです。いろいろと書きましたが、それ以外のことをごちゃごちゃ考えるメリットはないと思います。
オニールやミネルヴィニのように、株価上昇の勢いを利用する手法をモメンタム投資やトレンドフォローなどと呼びますが、この4ステージ理論を使うと、その上昇がどこで起きるかの特定がしやすくなるということです。